【世界経済紀行#2】南アフリカの経済

皆さま、こんにちは!

記事をご覧頂き誠にありがとうございます!

今回の【世界経済紀行】でも引き続き、
記事ごとに、一つの国をピックアップし、
その国の経済の特徴・長所・短所・展望を
客観的なデータを用いながら考察して
いきます!

調子・のり助

われ、相変わらずこういう企画もん好きやなぁ〜!ちゅーか…このブログって暗号資産がメインテーマやなかったっけ…
確かに、本ブログのメインテーマは暗号資産(とりわけXRP)ですが、暗号資産について情報収集をしていく上で、世界各国の経済について調べる機会が非常に多いことに気付かされました。

特に、私がメインで投資しているXRPは、世界各国の政府機関・金融機関・送金業社・企業による活用が期待・想定されているため、XRPについての情報収集をする際に、世界各国の経済の特徴を調べる機会が非常に多いです。

本シリーズは、これまで私が調べてきた、世界各国の経済に関する情報を共有するとともに、私自身の備忘録として情報を記録・まとめておきたいと思い、始めるに至りました。

管理人

今回の記事で取り上げる国

今回の記事で取り上げる国は…

南アフリカ

…です!

出典:Wikipedia

南アフリカは、アフリカ大陸の最南端に
位置する、同地域において一二の座を争う
経済規模を誇る共和制国家です。

南アフリカの基本情報

正式名称 南アフリカ共和国(Republic of South Africa)
面積 約122万平方キロメートル(日本の約3.2倍)
人口 約5794万人(2018年)
首都 行政府:プレトリア(ツワネ)
立法府:ケープタウン
司法府:ブルームフォンテン
名目GDP 約3681億USドル(世界34位)(2018年)
名目GDP
(一人当たり)
約6,353USドル(世界89位)(2018年)
ソース:地球の歩き方世界経済のネタ帳

管理人

南アフリカの基本情報を一通り見ていきましたが、いよいよ本題である南アフリカ経済の特徴を見ていきましょう!

南アフリカ経済の特徴

南アフリカ経済の基本概要

南アフリカの経済は、表面上の数字だけを
見ると…

堅実な発展途上国・新興国

…という印象を受けるかもしれません。

南アフリカは、アフリカ大陸において、
ナイジェリアと共に、同大陸において
最大規模の経済力を誇っています。

また、南アフリカ経済は、サービス業が経済の
中心となっており、製造業や農業が経済の中心
となっている多くの発展途上国・新興国と
比べて、南アフリカの経済は、やや成熟
していることが見て取れます。


加えて、南アフリカでは、天然資源が豊富に
採れ、特に…

・プラチナ
・ダイヤモンド
・ゴールド(金)


…などの、高価で需要が高い天然資源が多く
採掘されています。

特筆する点として、高価な天然資源の輸出に
よってもたらされる利益は、南アフリカの
経済全体のうちのほんのわずかな割合
だということです。

もちろん、高価な天然資源が豊富に採れる
ことは、南アフリカの経済にとって大きな
プラスですし、事実、同国の経済成長に
寄与しています。

しかし、それら高価な天然資源の輸出によって
もたらされる利益への依存度は低く、
あくまでも…

南アフリカ経済全体の成長の補助的な役割しか
果たしていない

…という点が、同国経済の相対的な強さを
裏付けています。

先述した通り、南アフリカの経済成長の
メインドライバーは、多くの先進国と同様
サービス業であり、同国経済がアフリカ大陸
諸国と比べて発展・成熟していることを
裏付けています。

以上のことを鑑みると、南アフリカは、
アフリカ大陸において、同大陸のもう一つの
経済大国であるナイジェリアと双璧を成す
アフリカの雄という印象を受ける
かもしれません。


しかし、南アフリカ経済には、アフリカ大陸
のみならず、世界に類を見ないほどの
ユニークな特徴があり、非常に大きな課題が
同国経済の肩に重くのしかかっています。

上記については、下記で詳しく
深掘りしていきます。

世界最大の経済格差を抱える国

今回の世界経済紀行で、なぜ南アフリカを
取り上げたのか。


それは、南アフリカが…

世界最大の経済格差

…を抱えているという特徴にクローズアップ
したかったからです。

南アフリカにおける経済格差がどれほど深刻な
ものなのか、それを理解する上で重要と
なってくるのが…

ジニ係数(gini coefficient)

…という指標です。

ジニ係数という指標を通じて、とある国に
おいて、どれほど経済格差が進んでいるかを
理解することができます。

まず、ジニ係数の仕組みを詳しく
見ていきましょう。

ジニ係数とは、端的に、0から1までの
値となっとおり…

・0に近いほど対象国における経済格差が小さい
・1に近いほど対象国における経済格差が大きい


…ことを表しています。

更に、ジニ係数が0の国は…

(理論上)その国における全ての所得が公平に
分配されている

…状態を表しており、
逆に、ジニ係数が1の国は…

(理論上)一人の個人がその国における全ての
所得を独占している

…状態を表します。

もちろん、ジニ係数が0あるいは1というような
状況は、現実的にはありえず(理論上のもの
であり)、全ての国は、ジニ係数が0から1の
間のどこかにあてはまっています。

参考 ジニ係数|証券用語解説集野村證券

では、世界一経済格差が拡大している
南アフリカの状況を詳しく
見ていきましょう。

まず、比較対象として、身近な国のジニ係数を
見ていきます。

最初に見ていく国は、近年経済格差の拡大が
懸念されている日本ですが、
日本のジニ係数は…

0.37(2017年)

…となっており、他の先進国と比較すると、
経済格差がやや拡大している傾向にあり
ますが、特段高い数値ではありません。

続いて、世界一の経済大国であるアメリカを
見ていきますが、アメリカのジニ係数は…

0.39(2017年)

…となっており、先ほど取り上げた日本と
比べて、値がさほど変わらないことが
見て取れます。

では、今回のメインテーマである、
南アフリカを見ていきますが、
南アフリカのジニ係数は…

0.62(2017年)

…となっており、世界一高い値と
なっております。


アメリカや日本の値と比較しても、南アフリカ
における経済格差の拡大がどれほど深刻なのか
が見て取れます。

このように、南アフリカは、名実ともに世界で
最も経済格差が拡大している国なのです。

ちなみに、南アフリカに次いで、世界で2番目に
経済格差が拡大しているとされている
コスタリカのジニ係数は…

0.48(2017年)

…となっており、1位の南アフリカと、実に0.14
もの値の差が生じています。

上記を踏まえると、南アフリカが圧倒的に世界
で最も経済格差が拡大している国であることを
裏付けており、同国における経済格差の深刻さ
を物語っています。
(ソース:Global Note

では、上記を踏まえた上で、先ほど取り上げた
南アフリカの経済の基本的な特徴をもう一度
振り返ってみましょう。

先ほど、南アフリカの経済は…

・サービス業が中心であり
・豊富な天然資源も採れ
・経済成長をするための地盤が整っており

…他のアフリカ大陸諸国と比較すると、
相対的に経済力が強固である点について
触れました。

そして、南アフリカ経済は、表面上・数字上は
堅実な発展途上国・新興国という印象が
見受けられる点についても言及しました。

しかし、南アフリカ経済の実態は…

国内のサービス業や他国に輸出される
豊富な天然資源から創出される利潤の多くは、
国民に満遍なく還元されることなく、
一部の富裕層にのみ流れている

…という事実が浮き彫りとなってきます。

南アフリカ経済の実態・同国内における
経済格差の深刻さが浮き彫りと
なってきましたね。

次に、この行き過ぎた・過剰とも言える
経済格差が生じている南アフリカ経済の
今後について詳細に深掘りしていきます。

南アフリカ経済の今後

南アフリカにおける経済格差がどれほど
深刻なものなのか。

2018年時点で、南アフリカの全人口の実に
過半数が…

毎日5ドル50セント(日本円で約600円)以下で
生活をしている

…ことが明らかになっています。

この水準は、世界銀行が定めている…

絶対的貧困の水準

…を下回っています。

参考 絶対的貧困と相対的貧困Chance for Children

つまり、南アフリカの全人口の過半数が、
絶対的貧困の中で生活をしているのです。

この数値は、南アフリカにおける経済格差の
深刻さを物語っています。

しかし、これ以上に不穏なことに、南アフリカ
では、絶対的貧困の水準で暮らしている人々の
比率が年々増加傾向にあるのです。

これは、世界的に見ても非常に稀有な事象で
あり、南アフリカを含めていくつかの国でしか
起きていない大変珍しい事象です。

つまり、南アフリカ経済は、成長している
のではなく、退化しているのです。

これは、GDPなどの経済成長率といった数値で
退化しているという意味ではなく、南アフリカ
の経済基盤が弱体化・脆弱化していることを
意味します。

南アフリカの富裕層は、先述した通り、
サービス業や天然資源の輸出などから得ている
利潤を享受し続け、更なる富の蓄積を
図れますが、同時に、対極にいる貧困層の人々
が享受できる所得は減り続け、生活も
苦しくなっています。


富める者は更に富め、貧しきは更に貧しく、
国全体の富の総量は変化せずとも、GDPの値は
変化せずとも、この歪な関係性はどんどん
拡大しているのです。

南アフリカの経済がなぜ後退しているのか、
理由は大きく分けて二つあります。


一つ目の理由は社会的流動性の欠乏です。

まず、大前提として、多くの経済学者は、
資本主義システムの構造上、
ある程度の経済格差は良いものとして
捉えています。

しかし、キーワードは…

ある程度の経済格差

…です。

経済格差が、ある程度健全な範疇で留められて
いたならば、良いものとして捉えられている
理由は、経済格差は、人々に努力をする
動機・インセンティブを抱かせるからです。


努力をすればお金持ちになれる

…というマインドセットが、
人々を勤勉にし、働き者にし、努力をさせる
ドライビング・フォースとなるのです。

また、モチベーションが高い個人が多く
集まれば、国全体の経済の成長に大きく資する
人材の層が形成されます。

資本主義では、利己的な動機や行動
(自己の利益を合法的・倫理的な範囲内で
最大化しようとする行動性向)が、間接的に
社会全体の利益に資するという考えがベースと
なっています。

しかし、南アフリカのように、経済格差が健全
な範疇に留まっておらず、貧困層の人がいくら
努力をしてもお金持ちになれないような国
では、人々のモチベーションは向上すること
なく、努力をしようという動機や
インセンティブも芽生えなくなって
しまうのです。

これは、前回の…

【世界経済紀行#1】メキシコの経済

…でも取り上げた、社会的流動性の概念とも
大きく関係してきます。

社会的流動性(Social Mobility)は…

個人の社会的階層がどれほど
固定化されているか


…を測る指標となります。

例えば、社会的流動性が高い国では、自身の
親の社会的階層が低かったとしても、個人の
努力次第で、親よりも高い社会的階層に
上昇しやすい環境が整っています。
詳しくはこちらの記事をご覧ください 参考 社会的流動性の地域差FI Planning


一度…

努力をしてもお金持ちになれない

…という意識が芽生えてしまうと、人々は
モチベーションを失ってしまいます。


そして、そのようなモチベーションが著しく
低下した個人の集合体が形成されると、
国全体の経済成長力も低下します。

そういう意味でも、本来であれば、国民の厚生
を鑑み、経済成長力を向上させるためにも、
不健全・過剰な経済格差が生じている場合、
国が一丸となって経済格差を是正しなければ
いけません。

南アフリカでは長年、有効な経済格差の是正策
が講じられることなく、経済格差が恒常化
しています。


二つ目の理由は、南アフリカの非常に不安定な
社会情勢です。

まず、大前提として、持続的・継続的な
経済成長を実現する上で最も重要となってくる
要素の一つが、社会の安定です。

南アフリカでは、この社会の安定が著しく欠如
しています。

まず、南アフリカの治安は
めちゃくちゃ悪いです。

どれほど悪いかというと、南アフリカ最大級の
都市の一つであるケープタウンは、
世界で15番目に犯罪率が高いとされています。
(ソース:Business Insider Japan


治安の悪さに加え…

・南アフリカ政府により繰り返される汚職
・拡大し続ける経済格差に対する不満の爆発


…など、南アフリカの社会情勢は非常に
不安定です。

加えて、不安定な社会は、経済成長の更なる
低下を招くとされる…

資本逃避(capital flight)

…を引き起こしてしまいます。

資本逃避とは…

ある程度の資産を保有している
富裕層・資産家が、より安全・安定している
国へ、自身の保有している資産ごと
移動・移住してしまう現象

…のことを指しています。

参考 経済記事でよく見かける「キャピタルフライト(capital flight)」とはどんな意味があるの?bizwords.jp

ある程度の資産を保有している富裕層・資産家
が、治安も悪く社会情勢も不安定な南アフリカ
に住み続けたり、自身の資産を留め続ける動機
はあまりありません(節税対策ぐらい?)。

南アフリカと比較して相対的に治安が良く、
社会が安定しているアメリカなどの先進国に
資産を移し、引っ越した方が賢明だと判断し、
資本逃避を行っている南アフリカの資産家が
年々増加しています。

南アフリカの経済にとって、資産家による
資本逃避は莫大な損失となります。

資本家が資本逃避を行う際に、最初に行うこと
が、海外に逃避させることができない
資産(不動産・高級車など)の精算です。

例えば、資産家が南アフリカにおいて保有
している土地を売却した場合、当然ですが、
需要と供給の原理に基づいて、地価に対する
価値下落圧力が生じます。

一人や二人だった場合、さほど影響は
ありませんが、数十人・数百人単位の
資産家が同様の行動を取り始めたら、
地価に対する価値下落圧力が加速度的に
高まります。

次に、資産家が南アフリカから他国に資本逃避
をする場合、当然のことながら、逃避先の
法定通貨を手に入れなければいけないので、
南アフリカの法定通貨である
南アフリカ・ランドを売却し、(アメリカに
資産を逃避させる場合)米ドルを購入(両替)
します。

そのことにより、南アフリカ・ランドの価値に
対して、価値下落圧力が掛かります(大勢の
資産家が同じような行動を取り始めたら、
価値下落圧力が加速度的に高まります)。

そして、資本逃避の最も厄介な点は、
ほとんどの場合…

非可逆的である

…ということです。

例えば、南アフリカの治安の悪さに嫌気が
さした資産家が、南アフリカを離れ、
アメリカに資本逃避したとします。

その資産家が、アメリカを新たな生活の基盤
とし、アメリカで家族を作り、アメリカの
生活に慣れたとします。


アメリカの生活に慣れ、生活の基盤をアメリカ
に根付かせた資産家が、あえて、治安が悪く
社会情勢も不安定な南アフリカに戻るような
ケースは、想定しにくいのでは
ないでしょうか。

このように、一度逃避された資産は、
戻ってこないケースの方が多いのです。

そして、逃避された資産は、南アフリカに
とっては、何らかの形で補填をしない限り、
決して穴埋めされることのない、絶対的な
損失なのです。

資本逃避が増加している南アフリカでは、
経済基盤の空洞化が進み、脆弱化しています。

まとめ

南アフリカは、以前の記事で取り上げた
メキシコ同様、強固な経済基盤を築くために
必要とされている…

・地理的な優位性
・豊富な天然資源
・若くて生産的な労働力


…などの要素を兼ね備えており、
先進国・経済大国になるための
ポテンシャルを有しています。


しかし、非常にもったいない(?)ことに…

国内における経済格差があまりにも
拡大してしまったため

…加えて…

政府が、経済格差を是正する働きかけを
怠ってしまったため

…先進国・経済大国への扉は、現時点では、
固く閉ざされています。

とは言え、南アフリカは多くの富を蓄積
してきました、問題は、その富が全て富裕層に
流れてしまったことです。

「富める者は更に富め、
貧しき者は更に貧しく」

…という有名な言説がありますが、
南アフリカ以上にこの言説があてはまる国は
ないでしょう。

南アフリカ政府は、富裕層や資産家による資産
の逃避を法的に防ぐなど、経済を上向かせる
ために、さまざまな施策を講じていますが、
これらは出血を遅らせることができても、
根本的な治療にはなりません。

・経済格差を助長する社会の構造的な欠陥

・行き過ぎた経済格差がもたら多くの弊害

・一度、極度の経済格差が生じると、
その状況を是正することがいかに難しいか

…など、南アフリカ経済は、一つの
ケース・モデルとして、世界中の多くの国
にとっての反面教師的な存在となっています。


管理人

今回の、南アフリカ経済に焦点を当てた【世界経済紀行】の記事は、以上となります!

最後まで読んで頂き誠にありがとうございました!

今回の記事では、南アフリカ経済のあらゆる側面・森羅万象を深掘りすることはできませんでしたが(卒業論文並みの文量になってしまうので)、私が南アフリカ経済について調べていく上で、最も興味を持った側面に焦点を当て、深掘り・考察・まとめさせて頂きました!

では!また次回の記事で!