【世界経済紀行#4】ベネズエラの経済

皆さま、こんにちは!

記事をご覧頂き誠にありがとうございます!

今回の【世界経済紀行】でも引き続き、
記事ごとに、一つの国をピックアップし、
その国の経済の特徴・長所・短所・展望を
客観的なデータを用いながら考察して
いきます!

調子・のり助

われ、相変わらずこういう企画もん好きやなぁ〜!ちゅーか…このブログって暗号資産がメインテーマやなかったっけ…
確かに、本ブログのメインテーマは暗号資産(とりわけXRP)ですが、暗号資産について情報収集をしていく上で、世界各国の経済について調べる機会が非常に多いことに気付かされました。

特に、私がメインで投資しているXRPは、世界各国の政府機関・金融機関・送金業社・企業による活用が期待・想定されているため、XRPについての情報収集をする際に、世界各国の経済の特徴を調べる機会が非常に多いです。

本シリーズは、これまで私が調べてきた、世界各国の経済に関する情報を共有するとともに、私自身の備忘録として情報を記録・まとめておきたいと思い、始めるに至りました。

管理人

今回の記事で取り上げる国

今回の記事で取り上げる国は…

ベネズエラ

…です!

出典:Wikipedia

ベネズエラは、南米地域北部に位置する
連邦共和制国家です。

管理人

今回の記事では…

ベネズエラの経済

…を取り上げますが、前回の記事で取り上げた…

ノルウェーの経済

…の続編のような記事となります!
え…南米のベネズエラと北欧のノルウェーの間にどういった関係があるんですか…?

皆目検討がつかないです…(汗)

困っちゃん

管理人

確かに、今回の記事で取り上げるベネズエラは、ノルウェーから遠く離れており、言語も文化も大きく異なりますが、両国間には、実は、ある大きな共通点が存在するのです!

なので、当記事を読む前に、もしよかったら、お手隙でしたら、前回の…

【世界経済紀行#3】ノルウェーの経済

…の記事を事前に読んで頂けますと、当記事の内容をより深く理解することができます!
こちらが前回の記事です! 【世界経済紀行#3】ノルウェーの経済

ベネズエラの基本情報

正式名称 ベネズエラ・ボリバル共和国(República Bolivariana de Venezuela)
面積 約91万平方キロメートル(日本の約2.4倍)
人口 約2886万人(2018年)
首都 カラカス
名目GDP 約984億USドル(世界62位)(2018年)
名目GDP
(一人当たり)
約3,410USドル(世界125位)(2018年)
ソース:地球の歩き方世界経済のネタ帳

管理人

ベネズエラの基本情報を一通り見ていきましたが、いよいよ本題であるベネズエラ経済の特徴を見ていきましょう!

ベネズエラ経済の特徴

ベネズエラ経済の基本概要

まず、ベネズエラ経済を語る上で、避けては
通れない一つの重要なトピックがあります。

それは、ベネズエラが、世界最大規模の
石油埋蔵量を誇る油田地帯を有する、
世界有数の産油国だということです。

困っちゃん

ん!?…

世界有数の産油国ってことは…

あ!そういうことなんですね!

先ほど仰っていたノルウェーとの共通点って、両国とも産油国だということだったんですね!
ビンゴ!

そういうことです!

前回の記事で取り上げたノルウェーと今回の記事で取り上げるベネズエラは、両国とも世界有数の産油国なのです!

管理人

困っちゃん

な、なるほど(テンション高っ…)

両国とも産油国だということは分かりましたが、産油国ってこの両国以外にもたくさんありますよね…

なんなら、一番最初の【世界経済紀行】の記事で取り上げたメキシコも立派な産油国ですよね…

なぜ、ノルウェーとベネズエラをセットで取り上げることにしたんですか?
お!困っちゃんさん鋭い質問ですね!

確かに、産油国はノルウェーとベネズエラ以外にも…

・メキシコ
・サウジアラビア
・カナダ
・イラン
・イラク


…など、無数に存在します。

では、なぜ今回ノルウェーとベネズエラをセットで取り上げることにしたかというと、両国は、産油国という非常に恵まれた環境に置かれた国という共通点があるにも関わらず…

全く異なる末路

…を辿りました。

ノルウェーは、前回の記事でも先述した通り…

石油から得た利益をそのまま市中にばらまかず、堅実な投資に回すことによって、国民が恒久的・安定的・持続的に利益・恩恵を享受し続けられる体制

…を築きました。

管理人

困っちゃん

そ、そうですよね…何度も読み直したので知っています…

あれ?ちょっと待ってください…

ベネズエラは、ノルウェーと同じ産油国でありながら、ノルウェーとは全く異なる末路を辿った…ということは…ゴクリ
そういうことです…ゴクリ

では、世界有数の産油国であるベネズエラが、どのような末路を辿ったのか、下記で詳細に深掘りしていきましょう…ゴクリ

管理人

ベネズエラは、前回の記事で取り上げた
ノルウェー同様世界有数の産油国で
ありながら、奇しくも、ノルウェーとは
真逆の運命を歩みました。

ノルウェーは、石油から得た利益を
(自国の)政府系ファンドに託し、
恒久的かつ持続的な利益を享受できる
体制を築きました。

つまるところ、ノルウェーは、国全体が
世界最大規模のヘッジ・ファンドなのです。

しかし、ベネズエラは、ノルウェー同様
世界有数の産油国でありながら…

経済が機能不全に陥っている

…と言っても過言ではないほど
経済が疲弊しており…

・国民は貧困に喘ぎ
・社会情勢や治安は乱れ
・政治は汚職と腐敗まみれ


…と、まさに地獄絵図の様相を呈しています。

極め付けは、ベネズエラ経済の惨憺たる現況を
最も色濃く示しており、近年のベネズエラで
発現している、人類史において前例を見ない
空前絶後のハイパーインフレ現象です。

ハイパーインフレとは、物価の急上昇に歯止めが効かなくなり通貨の価値が下落して、日用必需品を買うのにも、手押し車一杯の貨幣が必要になるような状態を表すのに使われる言葉だ。

理論上、物価は需要と供給に応じて絶えず変動しているべきものだ。「インフレ」は物価が上昇することを、「デフレ」は物価が下降することを指す。ハイパーインフレとは、インフレの概念が意味をなさなくなるくらいに、物価が激しく上昇する場合のことだ。

問題が起きるのは、一国の経済において紙幣の供給量が商品やサービスの需要を上回るときで、それによって通貨の価値が下がる。これは、税収を超える支出を賄うために、政府が新しい通貨を発行する際によく見られる。

実際に何をもって「ハイパーインフレ」と呼ぶのかは明確に決まっているわけではないが、経済学者のフィリップ・ケーガンは、1ヵ月に50%を超える物価上昇をハイパーインフレの始まりとし、月間物価上昇率がそれを下回る期間が1年以上続いたことをもって、終了と見なすことを提唱している。

出典元:あなたは「ハイパーインフレ」を説明できますか?|ベネズエラで何が起きているのかを知る6つのポイント《クーリア・ジャポン》


近年のベネズエラで起きている空前絶後の
ハイパーインフレ現象に関しては、新聞や
テレビなどの各種メディアが大々的に
報じており…

ベネズエラと言えばハイパーインフレ

…というイメージが定着している
のではないでしょうか。

では、ベネズエラで起きている
ハイパーインフレ現象がどれほど深刻な
ものなのか、詳しく見ていきましょう。

ハイパーインフレ現象が起きる以前でも、
ベネズエラにおけるインフレ率は、
多くの発展途上国・新興国と同様高い傾向に
ありました。

しかし、下記の通り、2014年頃からベネズエラ
のインフレ率は、いわゆるハイパーインフレの
域に突入し、その後現在に至るまで指数関数的
に上昇し続けました。

【ベネズエラのインフレ率(2014年~2018年】
・2014年のインフレ率:69%
・2015年のインフレ率:181%
・2016年のインフレ率:800%
・2017年のインフレ率:4,000%
・2018年のインフレ率:1,700,000%


※2019年のインフレ率:10,000,000%(IMFの予想)
(ソース:Wikipedia

困っちゃん

10,000,000%って…(唖然)

なんだかものすごい数字だということは分かるのですが、全くイメージが掴めないです…
そうですよね…2019年における日本のインフレ率は約1%だったので、1000万%のインフレ率がどういうものなのか、イメージが湧きにくいですよね…
(ソース:世界経済のネタ帳

数字だけですと、ベネズエラにおけるハイパーインフレがどれほど悲惨なものなのか、イメージが湧きにくいと思うので、具体例を用いてみましょう。

2018年におけるベネズエラのインフレ率は…

1,700,000%(170万%)

…でした。

非常に簡素化された例ですが、これが(理論上)どういうことかというと、例えば、2018年1月1日の時点で…

100円

…だったコーラの500ml缶が、2018年12月31日には…

1,700,100円(約170万円)

…に暴騰したことを意味します(あくまでも理論上です)。

管理人

困っちゃん

170万円!?

コーラが!?
あくまでも理論上の例えですが、ベネズエラでは実際にそのような恐ろしいことが起きてしまったのです。

ここで一点留意しなければいけないことは、(上記の例で用いた)コーラの本質的な価値が上がったわけではないということです。

コーラの価値が上がったのではなく、ベネズエラの法定通貨であるボリバルの…

モノやサービスに対する相対的な価値

…が暴落したのです。

つまるところ、ハイパーインフレ現象(物価の暴騰)により、ベネズエラの法定通貨であるボリバルは紙屑と化したのです。

管理人

ハイパーインフレに見舞われたベネズエラ
では、スーパーで日用品の買い物をするだけ
でも一苦労です。

出典:Zero Hedge

実際にベネズエラでは、上記の写真で見られる
ような光景が国中に溢れました。

スーパーやコンビニで日用品や日々の食べ物を
購入するためだけでも、山のような札束を台車
に積んで運ぶ必要があります。

ベネズエラの人々は、積んでいる現金が
盗まれるより、遥かに高価な台車が盗まれる
ことを心配したそうです。

出典:Bloomberg

ハイパーインフレにより、ベネズエラの
法定通貨・ボリバルは紙屑と化し、
膨大な現金の置き場所に困ったベネズエラの
人々たちは、現金をそのまま道端に
捨ててしまいました。

世界最大規模の油田地帯を有し、世界有数の
産油国であり、世界的にも恵まれた環境に
あるはずのベネズエラがなぜ…

・ハイパーインフレ
・重度の貧困
・社会の破綻
・治安の悪化
・政治の機能不全


…などの数々の不幸に見舞われてしまった
のか、また、なぜ全く同じ境遇にあるはずの
ノルウェーと…

真逆の運命

…を辿ってしまったのか、その要因を下記で
詳細に掘り下げていきます。

宴会はいつまでも続かない

先述した通り、ベネズエラは世界有数の産油国
であり、石油の埋蔵量に関しては…

・サウジアラビア
・カナダ
・イラン
・イラク


…などの名だたる産油国を抑え、堂々の世界1位
を誇ります(2018年)。

ちなみに、ノルウェーの石油の埋蔵量は
世界17位となっており、世界1位のベネズエラ
の埋蔵量(303,291百万バレル)は、
ノルウェーの埋蔵量(8,645百万バレル)の
実に約35倍にあたります。
(ソース:Global Note

ベネズエラはノルウェーよりも遥かに多くの
石油が採れるのに、ベネズエラの経済はなぜ
このような凄惨な事態に陥ってしまったのか、
時系列でその要因を掘り下げていきましょう
(石油なだけに…笑)。

時は1976年、当時のベネズエラの大統領…

カルロス・アンドレス・ペレス氏

…は、ベネズエラ国内における石油の
採掘・精製・輸出を独占的に行う…

ベネズエラ国営石油会社(通称:PDVSA)

…という国営企業を設立しました。

カルロス・アンドレス・ペレス元ベネズエラ大統領
出典:Wikipedia

ペレス元大統領は、ベネズエラにおける石油に
係る全ての…

営利活動(石油の採掘・精製・輸出)

…を国家が中央集権的に独占できるよう、
石油会社の国有化を行ったのです。

国家による石油会社の完全国有化自体は、
決して珍しいことではありません。

ノルウェーの国営石油会社…

エクイノール(通称:Equinor ASA)

…も、ベネズエラ国営石油会社同様
ノルウェー国内における石油に係る
全ての利権を掌握しています。

国が石油会社を国有化することによって、
同国における全ての石油の利益は国の懐に
入るので、国民に直接還元しやすくなります。

では、両国ともに石油会社を完全国有化した
ベネズエラとノルウェーの間で、どこで差が
生じてしまったのでしょうか?

まず、ベネズエラ国営石油会社は、
ノルウェーの国営石油会社・エクイノールと
比べ、事業効率が遥かに低かったのです。

いくら石油が大量に埋蔵されていても、
それらを効率的に地中から採掘し、精製し、
輸出できる体制が整っていなければ、
ただの宝の持ち腐れになってしまいます。

では、具体的に、ベネズエラ国営石油会社の
事業効率はなぜ低かったのでしょうか?

まず、ベネズエラ国営石油会社では、幹部や
職員による汚職・腐敗が恒常的に横行しており
同社の利益や設備投資(石油の採掘・精製技術
の向上)のための資金を幹部や職員が日常的に
横領・着服していました。

設立当初からベネズエラ国営石油会社では
腐敗が蔓延っていたため、当初から事業効率が
著しく低く、なんと、同社が設立された
1976年から1980年にかけて、新たな油田や
採掘場は一つも新設されなかったのです。

つまり、ベネズエラ国営石油会社は
スタートダッシュの時点からすでに
つまずいてしまっていたのです。

国営であれ民間であれ、石油会社の
事業内容・成長戦略は非常にシンプルです。

地中から石油を採り、精製し、輸出し、利益を
創出し、利益の一部を設備投資に回し、
より多くの石油を採り・精製し・輸出し、
より多くの利益を創出する

…極限まで突き詰めると、石油会社は上記の
シンプルなサイクルを延々と繰り返しながら
事業を拡大させていきます。

ノルウェーの国営石油会社・エクイノールは、
上記のシンプルな方程式に則って、
いわば機械的・最効率的・正確無比に事業の
拡大をし続けたので、世界有数の巨大石油会社
に成り上がることができたのです。

しかし、ベネズエラ国営石油会社は
汚職と腐敗の蔓延により、
上記のシンプルな成長戦略に則って
事業拡大を図ることができなかったのです。

とは言っても、石油はある程度の需要が担保
されているコモディティーなので、経営努力を
怠ったとしても事業自体が潰れることはなく、
1980年以降ベネズエラ国営石油会社は、
無難に卒なく事業を運営し続けました。

しかし、1999年に…

ウゴ・チャベス氏

…がベネズエラの大統領に就任したことで、
ベネズエラ国営石油会社のみならずベネズエラ
全体を取り巻く状況が一変します。

ウゴ・チャベス元ベネズエラ大統領
出典:Biography

単刀直入に、チャベス元大統領はベネズエラを
現在の惨憺たる状況に追いやった張本人・元凶
なのです。

チャベス氏は大統領に就任するや否や、
政権の要職ポストに親しい側近や忠誠心の高い
軍関係者を多く配置しました。

ちなみにチャベス氏は元軍人です。

政権の中枢だけでは飽き足らなかったのか、
チャベス氏はベネズエラ国営石油会社を含む
国営企業の幹部・要職ポストにも親しい側近や
忠誠心の高い軍関係者を多く配置したのです。

チャベス氏は政権や国営企業の要職ポストを
自身の側近や軍関係者で固め、自身の大統領
としての求心力を高めようとしたのです。

次第に、ベネズエラ最大の国営企業であり、
同国の心臓とも呼べるベネズエラ国営石油会社
の幹部・要職もチャベス氏の側近や軍関係者で
固められていきました。

・石油に関する知識が皆無
・石油会社の運営方法を全く知らない


…言うなれば…

全くのど素人

…であるチャベス氏の側近や軍関係者が
ベネズエラ国営石油会社の幹部・要職ポストを
占めるようになってからは、同社の事業効率は
著しく落ちます。


無理もありません、要職に就いたチャベス氏の
側近や軍関係者は、長年の実績や実力を評価
されてその地位に就いたわけではなく、
あくまでも大統領であるチャベス氏のコネを
通じてその地位に就いただけであり、健全な
競争が機能していたならば、本来そのポスト
にいるべき人間ではなかったからです。

そんな中、チャベス氏が側近や軍関係者を
手厚く優遇し、政権・国営企業の要職に
就かせていることに対して、不満と反感を
抱いた多くの国営企業の職員が国中で一斉に
ストライキを敢行しました。

ベネズエラ国営石油会社の多くの職員も
このストライキに参加していました。

では、国営企業の職員による(正当な)不満を
受けて、チャベス氏はどのような行動を
取ったのでしょうか?

チャベス氏は、なんと、自身の方針に
歯向かった人(ストライキに参加した国営企業
の職員)を一斉に解雇してしまったのです。

ベネズエラ国営石油会社の多くの職員も
解雇されてしまいました。

そして、チャベス氏は、解雇した職員の
代わりに軍関係者を雇い、一斉解雇の穴埋め
をしたのです。

つまり、ベネズエラ国営石油会社は、
チャベス氏の身勝手とも言える一連の
行動により…

・トップ(チャベス氏の側近)は
石油会社運営のど素人

・職員の多くは右も左も分からないような

新人だらけ

…というような状況になってしまったのです。

トップも中間管理職も全員石油に関する知識が
皆無のため、新人の育成すらできないような
状況です。

つまり、チャベス氏の悪政により、ベネズエラ
の心臓であるベネズエラ国営石油会社は、
完全に中抜きされ、もぬけの殻となって
しまったのです。

その後、どのような状況に陥ったかは
想像に容易いと思います。

ベネズエラ国営石油会社の事業効率は更に
落ち、チャベス氏が大統領に就任して以降、
同社の…

石油生産能力(石油の採掘・精製・輸出)

…は落ち続けます。


しかし、このチャベス氏…

無類の強運の持ち主

…だったのです。

チャベス氏が大統領に就任して以降、同氏に
よる目に余る悪政の数々により、
ベネズエラ国営石油会社の石油生産能力は
著しく落ちました。

しかし、奇しくもこの時期(2000年代初頭)、
国際市場における石油の取引価格が歴史的な
暴騰劇を見せていたのです。

そのため、石油の生産量は減ったものの、
国際的な石油価格の暴騰という思わぬ追い風に
後押しをされ、ベネズエラ国営石油会社
ひいては母体であるベネズエラ政府は、
莫大な利益を得ることができたのです。

困っちゃん

チャベス氏…ものすごい強運の持ち主…(唖然)
ええ、チャベス氏にとってはまさに…

棚から牡丹餅

…のような状況でした。

しかし、当のチャベス氏はおそらく自身の政策が悪政であるとは認識していなかったと思うので、このまさに天からの恵みとも言える石油価格の暴騰によってもたらされた莫大な利益により、チャベス氏は…

やっぱり俺の政策は正しかったんだ!(キリッ)

…と勘違いしてしまったかもしれないですね。

管理人

困っちゃん

為政者がまぐれと実力を混同してしまうと、後々厄介ですよね…(汗)

では、この偶然の産物とも言える莫大な利益を
手にしたチャベス氏は、その後どのような行動
を取ったのでしょうか?

ノルウェーのように政府系ファンドを
立ち上げ、国民が代々に渡って恩恵を享受
できるよう利益を長期投資に回した
のでしょうか?

あるいは、経済発展の基盤を盤石なものにする
ために、道路・医療施設・教育施設・研究施設
などの公共インフラの建設に充てた
のでしょうか?


いいえ、チャベス氏は石油から得た
莫大な利益を…

国民へのばらまきと減税

…という一過性の効果しか見込めないような
短絡的な政策に充てたのです。

チャベス氏はまるで図っていたかのように、
ノルウェーとは真逆の方針を取ったのです。

こういったチャベス氏による一連の選択が、
ノルウェーとは真逆の末路を辿った
ベネズエラの運命を決定づけたと言っても
過言ではありません。

前回の記事でも先述した通り、ノルウェーは…

・石油が無尽蔵に湧き出てくるわけではない

・石油に対する需要が半永久的に存在し続ける
わけではない

…という危機感を強く抱き、先手先手の行動を
取りました。

しかしチャベス氏は、
先々のことを全く考えず…

手っ取り早く国民の支持が得られる

…ばらまきと減税という禁じ手に
走ってしまったのです。

管理人

もちろん、ばらまきや減税が必ずしも悪手というわけではなく、それらが有効・必要な場合もあります(経済成長が鈍化している場合・災害などの有事の際など)。

しかしチャベス氏は…

後々ベネズエラの経済に対してどのような副作用を引こ起こすのか

…を全く考慮せずに、手っ取り早く国民の支持を得たいがためにばらまきや減税を行ったのです。
副作用って…ハイパー…

困っちゃん

管理人

それについてはまた後ほど…

平たく言うと、チャベス氏ひいては当時の
ベネズエラ政府は、石油から得た莫大な利益
を市中へとそのままばらまき、大規模な
減税を行い…

「明日のことは考えない!」
「今良ければそれで良い!」
「後先考えない!」
「宴会だ!」
「祭りだ!」
「ワッショイ!」


…モードに突入してしまっていたのです。


以上を鑑みると、当時の
チャベス政権・ベネズエラ政府が
推し進めていた一連の経済政策が、
いかに瓦解していたかが見て取れますが、
では、冒頭で触れた…

ベネズエラにおける人類史上類を見ない
空前絶後のハイパーインフレ

…は、どのようにして引き起こされた
のでしょうか?

ベネズエラにおけるハイパーインフレを
引き起こした直接的な要因は複数ありますが、
決め手となった主要因は…

チャベス政権があらゆる産業・商業セクターを
ひたすら国有化しまくったから

…ではないかと考えられています。

当時のチャベス政権は、石油から得た莫大な
利益に物を言わせ…

・運輸交通業
・医療事業
・福祉業
・通信業
・金融業


…を筆頭に、ありとあらゆる
産業・商業セクターを躊躇することなく
矢継ぎ早に国有化していきました。

チャベス政権はなんと…

観光業

…ですら国有化してしまい、同政権が国有化の
対象に定めた商業・産業セクターの幅が、
どれほど異次元なものであったかを色濃く
示しています。

その上でチャベス氏は、
ベネズエラ国営石油会社の時と同様、
新しく国有化した国営企業の幹部・要職ポスト
に親しい側近・友人・忠誠心の高い軍関係者を
手当たり次第配置しまくったのです。

例えば…

・金融について全く知識がない軍関係者が
国営銀行の頭取に就任したり

・医療知識が皆無な側近が公立病院の

病院長に就任したり

…本来そのポストに就くべき相応しい才覚の
持ち主は締め出されてしまい、チャベス氏と
近しいという理由だけで、本来そのポストに
いるべきではないような人が、場当たり的に
国営企業・組織のトップに配置されるという
現象が国中で起きてしまったのです。

行き過ぎた国有化に続き、適材適所の人事配置
が行われず、ベネズエラにおける人材の流動性
が完全に硬直してしまったのです。

当然ながら、全くのど素人によって管理されて
いた各国営企業が、その後適切・効率的に
運営・経営されることはなく、ほぼ全ての
国営企業が…

多額の赤字を垂れ流しながら

…運営・経営され続け、時間が過ぎるに連れ
指数関数的に膨れ上がって行った負債は、全て
石油から得た利益によって穴埋め・補填されて
いたのです。

ここまで来ると、いよいよ
終焉(ハイパーインフレ)に向かって
カウントダウンが始まります。


チャベス氏はもしかしたら…

石油は有限な資源であり、石油の価値は
青天井に未来永劫上がり続けるだろう

…といような幻想を抱いていたの
かもしれません。

しかし残念ながら、そして当然ながら、
石油の価値は無限に上がり続けることは
ありませんでした。

上がりきった石油の価格が調整・暴落をし
始めた時、ベネズエラの国営企業が抱えて
いた多額の負債を石油から得た利益で
穴埋め・補填することができなくなって
しまい、時限爆弾が盛大に炸裂して
しまったのです。

先述した通り、チャベス政権・ベネズエラ政府
は石油から得た莫大な利益を経済基盤の盤石化
を図るための先行投資や石油産業以外の
産業・商業セクターに対する設備投資を怠って
きたので、ベネズエラの経済は文字通り…

石油の利益に100%依存

…しており、石油価格の上下によって国家全体
の興廃が規定されてしまうようなリスクが非常
に高い状況に置かれていたのです。

そのため、石油価格の暴落と同時に…

・市中へのばらまきを続けられなく
なってしまう

・減税政策を維持できなくなってしまう


・国営企業が抱えている莫大な損失の穴埋めが

できなくなってしまう

…などの、ベネズエラが抱えていた多くの
潜在的リスクが露呈してしまい、石油の
価格上昇によりのみもたらされていた幻想は
脆くも地に崩れ去ってしまったのです。

では、ベネズエラ政府はこの未曾有の国難に
直面した時にどのような行動を取った
のでしょうか?

お金を…

・刷って刷って刷りまくり
・ばらまいてばらまいてばらまきまくる


…ことで…

・市中へのばらまき
・減税政策
・国営企業が抱えていた莫大な損失の穴埋め


…をし続けたのです。


開き直ったかのように、清々しいまでに、
ここまで来るともはや異次元緩和という
よりかは蛇口をひねり潰すかのように、
湯水の如く力一杯ばらまき続けました。

そしてその後ベネズエラは、ご存知の通り…

人類史上類を見ない空前絶後の
ハイパーインフレ

…という悲劇的な末路を
辿ってしまったのです。

終わることがないと思われていた宴会は、
ついに終焉を迎えたのです。

そして次の日、終わりの見えない二日酔いと
後片付けが待ち受けていたのです。

まとめ

ベネズエラ経済を擬人化すると…

宝くじが当たった後、
当たったお金を全て散財してしまうが、
とてつものない強運の持ち主で、
その後も宝くじを当て続けるが、
その成功体験に囚われてしまって、
自分は宝くじを無限に当て続けられると
信じ込んでしまい、借金をしながら宝くじを
買い続けたが、最終的には運が尽きてしまい
無一文どころか大量の借金を抱えてしまった人

…と表現できるかもしれません。

ベネズエラの国土には、有限かつ比較的需要が
高いとされている石油が世界一埋蔵されて
おり、前回の記事で取り上げたノルウェーの
ように豊かになるチャンスはいくらでもあった
はずなのに、なぜそのチャンスをものに
できなかったのか、それどころか世界的にも
貧しい国になってしまったのか。

つまるところ…

先見の明を持った賢明なリーダーに
恵まれなかった

…ことに尽きるのではないでしょうか。

特に…

・ベネズエラの心臓とも言える、
ベネズエラ国営石油会社を形骸化させて
しまい、石油生産能力を著しく下げた

・政権や国営企業の要職ポストに自身の側近や

軍関係者を多く配置した

・石油から得た莫大な利益を公共インフラや

経済基盤の盤石化を図るための
先行投資・設備投資に充てなかった

・手っ取り早く国民から支持を得るために、

短絡的で一過性の効果しか見込めないような
ばらまき・減税政策に走ってしまった

・石油から得た莫大な利益を背に、あらゆる

産業・商業セクターを根こそぎ国有化して
しまい、またしても要職ポストに自身の側近や
軍関係者を多く配置し、国営企業のほとんどを
機能不全に陥らせ赤字を垂れ流させた

・国営企業が抱えていた莫大な負債を石油から

得た利益で穴埋め・補填し続け、石油に対する
依存度を高めた

…チャベス氏の罪は深く、ベネズエラにおける
惨憺たる現況は、同氏によってもたらされた
人災と言っても過言ではないです。


ベネズエラのケース・モデルは…

豊富な天然資源と賢明なリーダーシップは
両輪の関係にあり、後者が欠乏している場合、
あるいは、後者が間違った方向に舵を切って
しまった場合、前者は無用の長物・宝の
持ち腐れとなってしまう

…ことを物語っているのではないでしょうか。

石油などの天然資源が定数だとすれば、
国のリーダーの資質は変数であり、リーダーの
資質によっては、前回の記事で取り上げた
ノルウェーのような豊かな国への道があれば、
逆に今回の記事で取り上げたベネズエラの
ような悲惨な国への道もあるのです。


管理人

今回の、ベネズエラ経済に焦点を当てた【世界経済紀行】の記事は、以上となります!

最後まで読んで頂き誠にありがとうございました!

今回の記事では、ベネズエラ経済のあらゆる側面・森羅万象を深掘りすることはできませんでしたが(卒業論文並みの文量になってしまうので)、私がベネズエラ経済について調べていく上で、最も興味を持った側面に焦点を当て、深掘り・考察・まとめさせて頂きました!

では!また次回の記事で!